Shut Up and Sing

 今日見た映画のこと。「ブッシュ批判事件」の渦中にあったカントリーミュージックの人気バンドであるDixie Chicksの3年間を追ったドキュメンタリー。「ブッシュ批判事件」はDixie Chicksのボーカルであるナタリーが、ロンドンでのコンサート中にアンチブッシュ発言をしたことから始まる。この発言をガーディアン紙が掲載し、9.11直後のアメリカでは激しいDixie Chicksバッシングが始まる。彼女たちのCDの不買運動が起こったり、CDを破壊するキャンペーンが行われ、アメリカのカントリーミュージック界(特にラジオ局。プレイリストから外される。)からは締め出される。メンバーは脅迫を受け、24時間の警護が必要になってしまう。アンチブッシュを訴える他のアーティストもたくさんいるというのになぜ彼女たちだけがこんなにバッシングを受けるのかというと、その原因はカントリーミュージックというジャンルにある。カントリーミュージックは保守的傾向が最も強いジャンルだ。そんなひどいバッシングの中でも屈しない彼女たちのタフさには頭が下がる。ブッシュのお膝元、テキサスのダラスでのコンサートの前には銃で撃つという脅迫の手紙が届くが、それでも彼女たちはコンサートをキャンセルしなかった。開演前の様子の映像は異様な緊張感があり、彼女たちの恐怖感がひしひしと伝わった。メンバーの3人全員に夫も子供もいて、家族のことについてもさぞ心配だったろうと想像する。長引くイラク戦争に疑問をもつアメリカ人も増え、彼女たちをめぐる状況は少しずつ好転しているとはいえ、Dixie Chicksは今でもカントリーミュージック界に完全には受け入れられていない。英語がまだよくわからないので完全に理解することはできなかったが、彼女たちの態度は揺るぎなく、潔いものだった。と、Dixie Chicksの政治的部分ばかり書いたが、音楽も良かった。特にボーカルのナタリーの声は透明感がある上に力強く、印象的だった。Dixie Chicksの音楽を楽しむだけでも価値のある映画だと思う。

Taking the Long Way
Taking the Long Way
posted with amazlet on 07.01.08
Dixie Chicks
Open Wide/Columbia (2006/05/23)
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