村上春樹

 昔読んだきりずっとご無沙汰だったが、こちらに来て村上春樹を再読。読んだのは「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」。彼の小説の作品は「アフターダーク」まですべて読んでいるが、やはり「羊をめぐる冒険」が一番面白く感じる。アメリカでは「海辺のカフカ」が人気作品のようだ。こちらに来て、村上春樹がいかにアメリカ人に愛されているかを感じる。奥様会でも「ノルウエィの森」についての話題を振られたことがある。村上春樹の絶大な人気は言うまでもないが、ではいったい読者は彼の作品のどこに惹かれるのだろうか?私の場合は「村上春樹的清潔感」が好きだ。小説の登場人物はじつにきちんとした生活を送っていることが多い。朝早く目覚め、軽く運動をし、朝食をとり、部屋の掃除をし、冷蔵庫の中身をチェックして足りないものの補充に買い物に行く。買って来た食料や日用品はあるべき場所に整然と並べられる。手の込んだ食事も多々見られる(NewYorkerに載っていた短編でもスパゲティーをゆでる描写がおいしそうだった。)。小説に多用される音楽についても、その知識は著者の頭の中できれいに整理されて、引用すべき場所できちんと引用されているように思う。主な主人公はごちゃごちゃした大量消費社会に飲み込まれることなく、じつにシンプルに生活している。それが私が感じる「村上春樹的清潔感」だ。ストーリーももちろん面白いが、何よりこういった清潔な生活感が読んでいて気持ちいい。アメリカにはこの3冊しか持ってこなかったので、ほかのも持ってくれば良かったと後悔している。NYだとBookoffなんかで手に入りそうなんだけど、ここは田舎だから手に入らない。しょうがないので洋書版でも買ってみようか。